Astrometry News 第2号(2008/02/08)

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  1. かぐやの測地観測とサイエンス
  2. JASMINEおよびNano-JASMINEの進捗状況など
  3. VERAの最近の動き
  4. ニュース記事の募集

創刊の辞かぐやの測地観測とサイエンス

国立天文台RISE推進室 花田英夫

日本初の本格的な月探査機「かぐや」(SELENE)が2007年夏9月14日にJAXA種 子島宇宙センターから無事打ち上げられました。その後2回の地球周回のあと、 10月に月周回軌道に入り、2つの重力計測用の子衛星(「おきな」と「おう な」)を分離した後、11月より月全面の観測を行っています。

国立天文台RISE推進室では、レーザ高度計(「かぐや」主衛星に搭載)、リレー 衛星搭載中継器(「おきな」に搭載)、VLBI用電波源(「おきな」と「おうな」 に搭載)の、3つの新しい 技術を用いた搭載器を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や九州大学・会津大学・ 国土地理院などと協力して開発し、月の地形と重力の高精度データを取得して います。

3つの観測の特徴は以下の通りです。

レーザ高度計は、これまでより一桁近く高い密度、精度で月全体の地形を観測 し、とくに月の極域の正確な地形を初めて取得します。

リレー衛星搭載中継器は、これまで観測が無かった月の裏側の重力場を初めて 詳細に調べます。月の重力場は周回衛星の軌道の予測値からのずれを調べるこ とによって推定できます。衛星が月の裏側にあるときには、地球からその動き を直接に追跡することはできませんが、「かぐや」では高度約100kmの主衛星 が月の裏側にいるときも「おきな」(高度100km x 2400km)を中継することに よってそのような観測を可能にします。

VLBI(超長基線電波干渉計)は,もともとクエーサなどの電波星が発する電波 を、複数の電波望遠鏡で同時に受信して,電波源の詳細な構造を精密測定する 方法ですが、衛星の高精度の位置決定にも応用できます。「かぐや」では、 「おきな」と「おうな」(高度100km x 800km)に搭載された電波源からの電 波を、国立天文台のVERA局(水沢、入来、小笠原、石垣島)のほかに、国立天 文台と協力関係にある上海、ウルムチ、オーストラリア、ドイツの天文台の望 遠鏡で観測し、両衛星の相対位置をこれまでにない高精度で観測します。

これらの観測から得られる地形と重力のデータから、地殻の厚さ、地下の密度 異常、コアの密度など、月内部に関する重要な情報を得ることができます。当 面の目標として、1)4-wayドプラー観測による初の月裏側の重力場観測に、 VLBIとドプラー観測を組み合わせた3次元軌道決定による縁辺部の重力場観測 を加え、世界標準となる高精度全球重力場モデルを開発する。2)レーザ高度計 データと高精度衛星軌道決定の結果から全球高解像度地形モデルを構築する。 3)重力場モデルと地形モデルを組み合わせてブーゲー重力異常を推定し、その 結果から月の地殻とリソスフィアの構造と物理状態を通して月の熱史を解明す る。4)上記重力場モデルの低次項の改良により慣性能率の高精度化を行い、中 心核の状態を解明する。等をRISE推進室が関係者と協力して実施します。

「かぐや」は現在順調に観測を続けています。「かぐや」の現状については下 記ホーム頁を参照して下さい。

  1. JAXA「かぐや」ホームページ
  2. 国立天文台RISE推進室ホームページ

JASMINEおよびNano-JASMINEの進捗状況など

国立天文台JASMINE検討室 郷田直輝

アストロメトリニュース愛読者の皆様、今年もよろしくお願い致します。 JASMINEおよびNano-JASMINEとも実現に向けて、関係者一同益々精進を致した いと思いますので、今後ともどうかご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げ ます。

 さて、創刊号の発行(2007.11.21)より現在まででJASMINEおよび Nano-JASMINEプロジェクトでの主な出来事、動きなどを以下にご紹介しておき ます。

1.国立天文台内の動き:

○2008年1月11日に天文台で開催された科学記者等(新聞、雑誌の記 者、NHK、出版社、デザイナーなど)へのレクチャーで、宇宙の距離測定方法 や位置天文学の基礎のレクチャーを郷田が行いました。さらに、小林秀行氏に よる、VERAの最新成果の紹介があり、その後、JASMINEやNano-JASMINEの紹介 を郷田が行いました。感触としては、位置天文観測やそれがもたらすサイエン スに非常に関心、興味をもってもらえたと思います。

○国際外部評価が全台的に分野毎に行われています(1月から2月にかけ て)。光赤外天文関連は、1月29日から31日まで行われ、JASMINEもレビュー を受けました。ミッション自体は非常に高く評価していただきましたが、今後 の技術課題などに関するアドバイスやご意見もいただきました。

2.光赤外天文学分野内での動き:

○光天連シンポ(今後の光赤外スペース計画、特にSPICAに関してが主な話 題)が、2007年12月19日(金)に国立天文台(三鷹)で行われました。 JASMINEやNano-JASMINEの進捗状況の報告も行いました。

3.JAXA宇宙科学研究本部での動き:

○宇宙科学シンポジウムが、2008年1月8日〜9日に行われました。JASMINE およびNano-JASMINE関連の発表をいくつかポスターで行ってきました。また、 宇宙基本法の話が特別セッションで議論されました。ところで、SPICA関連の ポスター発表で、JASMINEの想定している口径と同程度の80cmの鏡(C/SiC)の試 作がすでにできており、試作望遠鏡の実験設備も整いつつあるとの報告があり、 JASMINEにとっても大変有用であることが分かってきました。

4.観測システム関係の検討状況

光学系に関して、K−バンド用の設計を行い始めていますが、メーカーか らの参考意見もあり、視野の拡大ができる見込みも出てきました。さらに、望 遠鏡の微小な(10pm)構造変動を測定するレーザー干渉計型モニタの開発実験も 順調に進んでいます。

5.衛星システム関係の検討状況

JAXA筑波宇宙センターのエンジニアの方達10名、および宇宙研の工学系 の先生1名と集中検討を引き続き行っています。JASMINEでは、望遠鏡周辺で、 約10時間以内では20mK以内の温度変動に抑える必要があるという厳しい要求条 件がありますが、その望遠鏡の温度変動を抑える方法に関して、SIMのアイデ アなども取り入れながら、方向性が見えてきました。比較的単純な状況では、 JASMINEが要求する20mK/10時間の温度変動に抑えるのは可能と分かりました。 本当に実現可能かどうかは、今後、よりリアルな状況を詳細に検討していく予 定です。また、姿勢制御、静定時間の検討も開始されましたが、ミッション側 の要求に対して、提示された実現可能な案はファクター程度の違いで収まって おり、対処が可能そうであることも分かりました。現在、今までの検討状況を 整理したレポートの取りまとめを行っています。

6.Nano-JASMINE関係の進捗状況

○観測措置、衛星システムの開発の方は、ほぼ順調に進んでいます。2008 年1月27日付けの朝日新聞の朝刊第2面およびアサヒ・コムで比較的大きく 報道されました。打ち上げは、ウクライナのユジノエ社が開発中のサイクロン 4ロケットが濃厚になり、日程は、2010年7月(予定)と分かってきまし た。射場は、ブラジルの北東部、南緯4度当たりのアルカンタラです。2月末 にMOU(覚え書き)を結ぶ方向で進めています。日本から数名が、2月末にウ クライナに訪問する予定です。

VERAの最近の動き

国立天文台水沢VERA観測所 本間希樹

VERAが2つの近傍星形成領域の距離決定に成功

太陽近傍の星形成領域として知られるNGC 1333およびρohp-eastの距離計 測にVERAが成功しました。VERAによる水メーザーのモニター観測から、 NGC 1333は距離235 +/- 18 pc、ρoph-eaststは距離178 +13-37 pcと、それ ぞれ求められました。この2天体は太陽近傍にある比較的有名な中小質量星形 成領域で、太陽のような星の形成過程を観測的に探る上で重要な役割を果たし ています。その根幹となる距離をVERAが決めたことで、様々な物理量の絶 対的な決定に役立つと期待されます。

参考

  1. Imai et al. 2007, PASJ 59, 1107
  2. Hirota et al. 2008, PASJ 60, no 1, in press

ニュース記事の募集

このアストロメトリニュースへの投稿記事を皆様から募集致します。アス トロメトリに関わることでしたら、何でも結構です。研究成果、論文紹介、国 内外のプロジェクトなどの紹介、ご意見、ご感想、なんでも歓迎致します。記 事を投稿して頂ける場合は、国立天文台JASMINE検討室の辻本 (taku.tsujimoto at nao.ac.jp)までお送り下さい。よろしくお願い申し上 げます。

発行:国立天文台JASMINE検討室・水沢VERA観測所・RISE推進室
発行責任者:国立天文台JASMINE検討室室長 郷田直輝、
編集:国立天文台JASMINE検討室 辻本拓司、